迷光亭冬雀日記

思いつくまま、気の向くまま。行く先もわからぬまま。

この素晴らしき世界

 本日、病院。帰り道、駅のほうへと歩きだすと、これまで気がつかなかったのだが、緑道というか遊歩道があった。「ん?これいくと、駅に出られんじゃね?」と思い、足を向けた。

 春の日差しはうららかで、新緑が目にまぶしかった。

 ふと、"I see trees of green,..."というサッチモの例の曲のフレーズが頭をよぎり、にわかに、唐突に実感した。そう、確かに、"What a wonderful world."だった!

 もともとイカレぎみの私の頭が、この陽気で、いよいよ行きつくところまでいってしまいそうになった、それだけのことかもしれない。

 ただ、きわめて主観的な見地から言わせてもらえれば、私は世界の広さと、そこに息づく生命の豊潤さを、全身全霊で感じたのである。

 木々、葉、風、光、芝生の上の子どもとその母親、鳥、さえずり、車、坂道、遠くに見える、駅にすべりこむ電車!生きとし生けるものはもちろんのこと、無生物たちまでもが、この今日という良き日を喜んでいるようだった!

 そして、私は心に決めた。

 私は、この先、何度でも挫折し、くじけ、心折れるだろう。でも、「世界」と「他者」が存在する限り(「世界」、それは私の住まう場所であり、「他者」、それこそ私が求めるもの)、私は何度でも、繰り返し、日々の暮らしをやり直すだろう。

 あの時、道で、私とすれちがったひとたちは、いぶかしんだかもしれない。なぜなら、こののどかな昼下がりに、私は感情の高ぶりの中、ほとんど泣きそうになりながら、顔をくしゃくしゃにして歩いていたのだから。

 

追記:道中、寄り道して、書店で、海猫沢めろんの新刊を買う。先ほど読了したが、また泣きそうになった。今日の私は、なるほど神経過敏かもしれない。